診療科目

がん遺伝子療法

がん遺伝子治療について

1.遺伝子異常とがん

がんは遺伝子の異常が積み重なることによっておこる病気であると考えられています。遺伝子とは、ゲノムDNA (遺伝情報) のうち、
細胞などをつくるタンパク質のもとになる部分のことを指します。遺伝子異常とは、遺伝子の変異や欠損、メチル化(遺伝子の発現量が
減ってしまう)や過剰発現などにより、本来のタンパク質の機能が失われてしまうことを指します。遺伝子異常によっておこる病気は
いろいろなものが知られていますが、がんの場合、がん抑制遺伝子とよばれる遺伝子の異常が細胞のがん化につながりやすいと考えられています。

2.がん抑制遺伝子とは (図1)

がん抑制遺伝子とは、それをもとに作られるタンパク質が、細胞のがん化するのを防ぐ役割を持っていたり、がん化した細胞を細胞死
(アポトーシスといいます)へと導く、あるいは増殖を抑えるといった働きをもっている遺伝子のことです。したがって、もしこれらの
タンパク質が正常に働かなくなると、不幸にしてがん化に至ってしまった細胞が死ぬことなく増えてしまい、やがてがんを形成するということになります。実際にがんの組織を調べると、がん細胞にはがん抑制遺伝子の異常が非常に多く検出されます。

3.がん遺伝子治療の目的とウイルスベクター (図2)

遺伝子治療とは、ある遺伝子の異常をきっかけにおこる疾患を、その遺伝子を正常にもどすことによって治そうというものです。がんの
場合、そのもとになっているがん細胞において異常となっている遺伝子を正常化することにより、その細胞が増えるのを止めたり、死んでいくように導くことをねらっています。その場合、正常化の標的となるのは主にがん抑制遺伝子ということになります。がん抑制遺伝子が異常になったがん細胞に正常な遺伝子を導入し、タンパク質の機能を正常化させる(がん抑制機能をもとに戻す)ことで、がん細胞の増殖を止め、消滅させることを目的とした治療法です。遺伝子の導入のための手段として用いられるのはレンチウイルスベクターとよばれる
もので、人工的に病原性を取り除いたウイルスに目的の遺伝子を組み入れたものです。ウイルスが感染した細胞では組み込まれた遺伝子をもとに目的のタンパク質がつくられ、本来の機能を発揮することになります。

4.どのような遺伝子ががん治療に用いられるのか (図2)

サンテクリニックで行うがん遺伝子治療に用いるのは主に下記の4つで、その目的は以下の通りです。

  1. p53 (がん細胞をアポトーシスへと導く)
  2. PTEN (がん細胞の増殖を抑える)
  3. p16 (がん細胞の増殖を抑える)
  4. CDC6 shRNA (細胞の増殖を調節するタンパク質CDC6を減少させ、がん細胞の増殖を抑える)

上記のうち、1~3はがん抑制遺伝子で、それらの異常がほとんどのがんで認められています。また4の標的であるCDC6はがん細胞では
発現が過剰になっていて、それががん細胞の増殖につながっていると考えられています。shRNAはタンパク質のもとになるメッセンジャーRNA(mRNA)を減少させる(RNA干渉といいます)作用があり、CDC6shRNAが細胞で発現するとCDC6タンパク質の量は減少します。
したがって、1~3のがん抑制遺伝子を正常化し、さらにCDC6タンパク質の量を正常化することにより、がん細胞の増殖が抑えられたり、死滅へと向かうといった効果が得られ、やがてがんが縮小・消滅するということが期待できます。この他にもいくつかの遺伝子を治療に
用いる場合がありますが、患者様の状況や検査結果などを総合的に判断し、どの遺伝子を用いるのかを決めて行きます。もちろん治療の
過程で状況に応じた変更も可能です。また、遺伝子治療に用いる遺伝子製剤は今後もアップデートされていく予定で、常に最新のものを
提供していくことが可能です。

5.がん遺伝子治療の適応

前述の通り、がん抑制遺伝子の異常はがんの種類を問わず認められるので、がん遺伝子治療の対象もすべてのがんということになります。
また、標準治療に与える影響もないと考えられるので、どの治療法との併用も可能です。

6.がん遺伝子治療の方法・副作用について

用いるのはタンパク質製剤で、点滴により投与を行います。副作用はほとんどありません。投与直後に発熱を認めることがありますが、
一過性のもので解熱剤によりコントロール可能です。

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